不機嫌なキスしか知らない
「少しは顔色良くなったな」
「え……」
予想外の言葉に、逸らしていた目をもう一度合わせる。
……心配、してくれるんだ。
私が少し元気になったの見て、そんなに優しい顔してくれるんだ。
紘が私を見守るみたいに見つめるから、なんだか照れくさくて居心地が悪い。
「ねえ、紘はどうして麗奈先輩を好きになったの……?」
ふたりきりの保健室。
いつもよりちょっとだけ優しい紘。
こんな機会はめったにないから、少しだけ調子に乗ってみる。
紘は、え、と声を漏らしたけれど、少し考えてからまた口を開いた。