不機嫌なキスしか知らない
「……最低だね、みんな」
ぽつりと呟いた私に、紘は視線を向ける。
最低だよ、みんな。
好きでもない人と遊んで、その気持ちを弄んで、自分が苦しみから逃れるためだけに使って。
……私も、最低だ。
圭太のことが好きなくせに、どうして平気で紘とキスするんだろう。
どうして紘のこと、欲しいなんて思うんだろう。
「……私も、最低」
俯いたままこぼれた言葉に、紘は泣きそうな顔をして微笑んだ。
「──お前はちゃんと綺麗だよ」
「私だって、みんなと同じことしてる」
「してない。俺が綺麗だった紗和を、汚してるだけ」