不機嫌なキスしか知らない
「そういえば圭太──」
「あ、妹尾さん!」
私が呼びかけた声は、圭太の嬉しそうな声にかき消された。
圭太がパッと顔を上げて見つめる方を見たら、黒い髪を綺麗にポニーテールにした菫ちゃんがいた。
圭太とお揃いの、赤いハチマキ。
同じクラスだから当然なんだけれど、思わず自分の青いハチマキを取ってしまいたくなった。
「あ、今井くん!おはよう」
にこにこしながら駆け寄ってくる菫ちゃんは、揺れるポニーテールがすごく可愛くて、圭太が惚れてしまうのもわかる。
それにきっと、こんなに嬉しそうな顔するってことは、菫ちゃんもやっぱり圭太のことが……。