不機嫌なキスしか知らない



菫ちゃんは、いい子なのに。
何も悪いことしてないのに。


それなのに、私の汚い嫉妬心が、菫ちゃんのことを好きになれない。

そんな自分が、すごく嫌だ……。





「大丈夫?紗和」




ぼーっとして立ち止まっていた私に、様子を見ていたらしい杏奈が心配そうに声をかけてくれた。



「だい、じょうぶ」

「……まあ、圭太くんが告白するの今日だもんね。大丈夫なわけないか」




眉を下げて頷いてくれる杏奈に、へらりと笑う。私も自分が情けないよ。



「もう、わかってたことなのにね。こんなにズルズル悩んでる自分のことも嫌なんだけど……」





何か言おうとした杏奈が、やっぱり何も言わずに私の頭をポンと撫でた。


俯いて自分のスニーカーをぼんやり見ていた私の頭のハチマキが、突然するりと抜ける。




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