不機嫌なキスしか知らない



「紘のおかげかもね」



ちらりと紘を見てそう言ったら、少し照れたみたいな顔をした、ような気がした。




「……でも俺のこと好きになるわけないんだろ」



拗ねたみたいな紘の声が小さくて、よく聞こえなくて。

「え?」と聞き返したら、いつも通りの不機嫌な顔で私を見る。




「──塗り替えてやるよ。アイツの思い出全部、俺で」






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