不機嫌なキスしか知らない



紘の骨張った手が、私の頬にそっと触れる。

それだけで頬に熱が集まって、胸の奥の方がジンジンする。



ゆっくり近付く、紘の綺麗な顔。

ゆるく巻いた黒髪の間から、シルバーリングのピアスがのぞく。





「俺とのキス以外で、ドキドキできなくなればいいのに」






耳元で、吐息がかかるくらいの距離で囁かれた言葉に、ドクン、と心臓が大きく跳ねた。





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