不機嫌なキスしか知らない



真っ赤になっているであろう私の顔を満足げに見つめる紘は、そのまま唇を重ねた。


その唇を、もっと欲しがってる私がいる。

認めたくないけど、もう、とっくに──。





ちゅ、と触れた唇は、そのまま徐々に角度を変えて深くなる。



「名前、呼んで」



脳が痺れるくらい甘い声に、クラクラする。



「ひ、ろ」

「もっと」

「紘、」

「聞こえない」

「紘、紘……っ」




溺れるみたいな甘いキス。

本当に圭太への想いを塗り替えようとするようなそれに、頭が追いつかない。




< 199 / 275 >

この作品をシェア

pagetop