不機嫌なキスしか知らない



そっと触れた唇からは、きっと麗奈先輩のグロスが移った、ベリー系の甘い味がした。


ドクン、ドクン、と心臓が鳴る。

胸の奥からじわりと甘い熱が広がって、私の体を毒で侵す。




「じゃあまたな、紗和」




ぽん、と私の頭を撫でて、教室から出ていく藍沢くん。


私はしばらく動けなくて、小さく息を吐いた。




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