不機嫌なキスしか知らない
私は、紘がどれだけ優しく女の子に触れるのか、知らない。
紘のホクロがどこにあるかなんて、知らない。
キスをする前、吸い込まれそうになるくらい綺麗な瞳に私を映すこと。
いつも不機嫌にキスをすること。
最低だけどすごく優しくて、ずるいこと。
それから、泣いてしまうくらい、麗奈先輩のことが好きなこと。
……私は紘のこと、それしか知らない。
それは紘にとって、私が何でもない存在だからだ。