不機嫌なキスしか知らない
「圭太!どうしたの?」
驚いてそう問いかけたら、圭太は得意げに笑った。
圭太はまだジャージを着ていて、朝はセットしていた髪は汗で少し崩れている。
きっと自分の家に帰る前に私の家に寄っているのだろう。
圭太の笑顔を見れば、どんな用事でうちに来たのかなんて何となくわかる。
だけど、ショックじゃなかった。
「妹尾さんと付き合うことになった!」
そう言って笑う圭太の表情は今まででいちばんキラキラしている。
……ああ、その顔をさせられるのはやっぱり、私じゃなかったんだな。
そう思ったら少し切ないけれど、もう大丈夫。