不機嫌なキスしか知らない



「よかったじゃん!おめでとう」



ちゃんと私も笑って、そう言えた。


「明日デートすることになったんだ」

「明日は体育祭の代休だもんね」


「まあ、それだけ!
紗和は前から相談乗ってくれてたし、1番に報告しようと思ってたからさ」



屈託のない笑顔。きっと本心からの感謝。

今までの私だったら、泣いちゃうくらい苦しかっただろう。

でも今は、ちゃんと心からおめでとうって思えるよ。



……それは、紘のおかげで。

それから今、きみのことを考えると胸が苦しいのも、紘のせいだね。




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