不機嫌なキスしか知らない



「うん、本当におめでとう。
明日は頑張りなよ!遅刻しないようにね」


「30分前から駅で待ってるわ」

「それは早すぎて怖い」

「はは、ありがとな!じゃあおやすみ」

「うん、おやすみ」



隣の家に帰って行く圭太を見送って、私も部屋に戻る。


これで私の10年以上の片想いが、ちゃんと終わったんだなぁ。

そう思ったら少し寂しいけれど。




誰にでも優しいところが好きだった。

目を細めて、白い歯を見せて笑う顔が好きだった。

いつも私の味方でいてくれる、圭太のことが好きだった。



「……ばいばい」



小さくつぶやいた言葉は、夜の空に溶けていった。




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