不機嫌なキスしか知らない



え、と思わず声を漏らす。


……もしかして、心配してかけてきてくれたんだろうか。

今日、圭太が菫ちゃんに告白するって知ってたから?



そう思ったらぎゅうっと胸の奥を掴まれたみたいに苦しくなって、でも温かくて、優しくて。


なんともいえない愛しさが私を包む。



「圭太ね、付き合うことになったんだって」


『……そう』


「明日、初めてのデートなんだって、嬉しそうに報告してくれたよ」

『へえ』



興味なさそうな、ぶっきらぼうな返事。

だけどなんて言っていいか分からなくて迷ってるだけだって、本当は優しいきみを知ってしまった私にはわかるよ。




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