不機嫌なキスしか知らない
「……でもね、悲しくなかったよ」
『……』
電話の奥で、少し驚いたような紘の呼吸が聞こえる。
「これで私の片想いはちゃんと終わったんだなって思ったら、心から「おめでとう」って言えた」
『……そっか、』
きっと今までの私だったら、泣いてしまっていた。
何が変わったのかって、それは間違いなくて。
「……紘のおかげ、かも」
かも、なんて言葉はただの照れ隠し。
本当はそんな言葉なくたって、自分ではわかってた。