不機嫌なキスしか知らない


その言葉に、色々なことを考えてしまう。

どうして、圭太との思い出の場所に行こうとするの?
どうして、明日誘ってくれたの?


明日、圭太と菫ちゃんがデートだから、私が寂しくならないように。

圭太への私の気持ちを、忘れさせるように。


色々なことを考えて、紘はこの電話をしてくれたんだろうか。
それともただの気まぐれ?



「……水族館が、思い出に残ってるかも」


『じゃあ明日、水族館な』



「うん、わかった」


『……おやすみ。また泣きそうになったら電話しろよ』



それだけ言って、私の返事も聞かずに切れた電話。

真っ黒になった画面を見つめて、私の心臓はドキドキうるさかった。


「眠れないよ……」




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