不機嫌なキスしか知らない
紘の、私より骨張った手が、私の右手に触れる。
一本一本、指を絡めるみたいに繋がれた手に、ぎゅっと胸が疼いた。
私たち、キスはしたことあるのに手を繋ぐのは初めてだから。
だから尋常じゃないくらい、ドキドキする。
「ねえ、紘、」
「……なに」
「手、」
「嫌なの?」
「嫌じゃ、ないけど」
「じゃあいいじゃん」
いい、けど。
嫌じゃ、ないけど。
でも私たち、恋人同士じゃないのに。
なんて、今更なことを思ってしまった。