不機嫌なキスしか知らない



紘の、私より骨張った手が、私の右手に触れる。


一本一本、指を絡めるみたいに繋がれた手に、ぎゅっと胸が疼いた。



私たち、キスはしたことあるのに手を繋ぐのは初めてだから。

だから尋常じゃないくらい、ドキドキする。



「ねえ、紘、」

「……なに」

「手、」

「嫌なの?」

「嫌じゃ、ないけど」

「じゃあいいじゃん」



いい、けど。
嫌じゃ、ないけど。


でも私たち、恋人同士じゃないのに。
なんて、今更なことを思ってしまった。



< 222 / 275 >

この作品をシェア

pagetop