不機嫌なキスしか知らない
「はぁ、楽しかったね!」
水族館を一通り見て、近くのカフェでご飯を食べて。
帰り道の駅に向かいながら隣の紘に話しかけると、ああ、と微笑んでくれた。
……さっき紘のキスを避けてしまったことは、気にしてないみたいだ。
気にしないようにしてくれてるのかもしれないけれど。
電車に乗って、私たちの高校のある駅まで帰る。
ホームに到着した電車に乗ったら、ひとつだけ席が空いていて。
「座れば?」
と私を座らせてくれる紘のさりげない優しさに、またドキドキした。