不機嫌なキスしか知らない
「昨日、菫ちゃんと一緒に帰ってたじゃん。よかったね」
次の日の朝。
いつも通り家の前で待っていた圭太に、少し安心しながらも家を出る。
小学生の時からずっと、圭太は私の家の前で私を待ってくれて、一緒に学校に通っている。
それはずっと私たちの当たり前だったけれど、それもいつか終わるのかもしれない。
終わりは、近付いてきているのかもしれない。
最近ずっと、朝、家の外に出るのが怖い。
圭太がいなかったら。
もう明日からは一緒に登校するのやめようって、言われてしまったら。
そんな嫌な想像がいつも頭にあって、不安に駆られる。
圭太に彼女ができたら、いつまでも私と学校に行くことはできないだろう。
私だってそこまで無神経じゃない。
……だけど、もう少しだけ一緒にいようよ。
まだ私、圭太の隣を手放したくないよ。