不機嫌なキスしか知らない
流れてくる明るい歌声。
アップテンポな曲。
圭太と一緒に行ったライブを少し思い出して。
それから、この広い電車の中で、目の前の紘とふたりだけ、同じ曲を聴いてるんだって事実にドキドキした。
あの時は、片想いなんて辛いだけだって。
こんな明るい曲は嘘だって、思ってたけど。
でもなんだか今は少しだけ、素敵な曲だって思える。
「その曲、今日から『アイツの好きな曲』じゃなくて『俺と聴いた曲』な」
目の前の紘がさらっとそんなことを言うから、胸が痛いくらいキュンとしてしまったよ。