不機嫌なキスしか知らない


「麗奈……?」




隣で紘が呟いた言葉に、ああ、見間違いじゃないんだって確信した。


綺麗に巻かれたブラウンの髪。

麗奈先輩の私服は初めてみるけれど、ミニスカートにオフショルダーのトップスは麗奈先輩らしいと思った。



そんな麗奈先輩が、広場のベンチに座って泣いている。


紘の声に驚いたように顔を上げた麗奈先輩の、涙で濡れた瞳が紘をとらえる。



「紘……っ」



震えた声に、胸が痛む。
きっと紘は行ってしまうだろう。




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