不機嫌なキスしか知らない
「え、見てたの?偶然昇降口で会って、一緒に帰ることになったんだよね」
一瞬驚いた顔をしてから、へらりと嬉しそうに笑う圭太の笑顔に、胸がちくりと痛んだ。
「そっか、良かったね」
無理やり笑顔をつくるけれど、心の中には靄が掛かる。
菫ちゃんは、清楚で可愛い。ちゃんと話したことはないけれど、圭太が好きになるんだからきっといい子なんだろう。
ふわりと笑う顔は花が咲いたみたいで、圭太が好きになる気持ちもわかる。
「また一緒に帰ろうって誘ってみてもいいと思う?」
「いいんじゃない?楽しそうだったし」
「そっか、じゃあ頑張ろうかな」
……ああ、また背中を押してしまった。
圭太が頑張っちゃったら私が困るのに、どうしていつも頑張れって言ってしまうんだろう。