不機嫌なキスしか知らない
「アイツにあげてないお前の初めて、全部ちょーだい」
紘がニヤリと笑って、私の手首を掴む。
え、と驚く間も無く、私はいつのまにか机に倒れていて。
上に覆い被さるのは、オオカミみたいな瞳で私を見下ろす紘。
「え、ちょ、」
「アイツに触らせてないよな?」
つー、と私の首筋を撫でる紘の指。
びく、と肩を揺らしてしまって、恥ずかしくなって顔を逸らす。
「──全部もらうから、覚悟しとけよ」
意地悪に笑うきみからはきっと、もう逃げられない。