不機嫌なキスしか知らない
◇◆
誰もいない放課後の教室。
オレンジ色の夕焼けがふたりを照らす。
きみは片手でネクタイを緩めて、ゆっくり私に近付いて。私の頬に手を添えて、長いまつげの瞳を伏せる。
私の唇に触れたそれは、私の存在を確かめるみたいに甘く深くなる。
きみの不機嫌なキスは、もう知らない。
私にくれるのは、いつも
優しくて、甘くて、まるで宝物に触れるみたいな
愛おしいきみのキスだけ。