不機嫌なキスしか知らない
「なあ紗和、どうしよう」
学校に向かう途中。幼なじみの圭太が困った顔で私を見つめる。
「デートでも誘えば?」
「それはハードル高いって」
真剣に考えてくれよ、と笑う圭太に、私もへらりと笑ってみせる。
うん、ごめん。デートに誘う勇気なんてまだないだろうなって、わかってて言った。
なんて心の中で謝りながら、圭太の隣を歩く。
内田 紗和、高校2年生。幼なじみの今井 圭太とはもう17年の仲で、お互いのことはなんでも知ってる。
……私の気持ち以外は、きっと。