不機嫌なキスしか知らない


回ってきた箱から四つに折り畳まれた小さな紙をひとつ取って、めくる。

「4」と書かれた文字と黒板の席順を照らし合わせて、席を移動する。



窓際の前から4列目。


まあ、今よりは後ろの席だからいいけれど、どうせなら1番後ろの方がよかったなぁ。



なんて贅沢なことを考えながら移動する。
隣は……あ、田中くんだ。


「1番後ろが良かったよな」


なんて友達と喋りながら移動してきた田中くん。と、そこに。




「なあ田中、俺1番後ろだから替わって」


「6」と書かれたくじをひらひらと見せながら、やってきたのは藍沢くん。



「え、いいの?」

「おー、俺ここがいい」

「ラッキー。ありがとうな」



田中くんが喜んで後ろの席に移動したのと入れ替わりに、藍沢くんが隣の席にどかっと座った。



「よろしく、紗和」




にっこり笑う彼が、何を考えてるのか全然わからない。



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