不機嫌なキスしか知らない


妹尾さんと圭太が出会っていたっていなくたって、圭太が私を好きになるならもうとっくになってるだろう。


圭太を振り向かせたいなら、私がもっと頑張らなきゃいけなくて。

「幼なじみ」という心地いい関係を壊す勇気がなくちゃいけなくて。


私は何もできないまま人の不幸ばっかり祈る臆病者で。



そう思ったらじわり、と目の奥が熱くなって、涙が浮かぶ。



……嫌いだ、こんな自分も。
私を好きにならない圭太も。

ついでに全然わからない数学の問題も。




生まれてから圭太しか好きになったことないのに。

圭太のことだけ見て生きてきたのに。


今さら他の人のことなんて、好きになれないよ──……。



< 46 / 275 >

この作品をシェア

pagetop