不機嫌なキスしか知らない
妹尾さんと圭太が出会っていたっていなくたって、圭太が私を好きになるならもうとっくになってるだろう。
圭太を振り向かせたいなら、私がもっと頑張らなきゃいけなくて。
「幼なじみ」という心地いい関係を壊す勇気がなくちゃいけなくて。
私は何もできないまま人の不幸ばっかり祈る臆病者で。
そう思ったらじわり、と目の奥が熱くなって、涙が浮かぶ。
……嫌いだ、こんな自分も。
私を好きにならない圭太も。
ついでに全然わからない数学の問題も。
生まれてから圭太しか好きになったことないのに。
圭太のことだけ見て生きてきたのに。
今さら他の人のことなんて、好きになれないよ──……。