不機嫌なキスしか知らない



──ガラリ





急にドアが開く音がして、驚いて肩を揺らす。

慌てて目元の涙を拭って振り返ったら、ドアの近くに、バッグを肩にかけて怠そうに立っている紘がいた。


気怠げな表情で、にこりと愛想笑いすら浮かべないで。

泣いてる私に慌てることもせずに。



なんでもないみたいに私の前の席まで来て、どさっと乱暴にバッグを置いて座る。



いつも隣の席にいる紘が前の席にいるのはなんだか新鮮だ。

私の机の上の数学の教科書と、バツだらけのテストを見て眉をしかめる。




「え、ばかじゃん」



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