不機嫌なキスしか知らない



「教えてやろーか」

「え、いいの?ていうか紘って勉強できるの?」

「は?ばかにすんな。できるから」

「意外すぎる……」




つい思ったことを素直に呟いたら睨まれてしまって、へらりと笑って誤魔化す。

紘は不機嫌な顔で私を睨んで、それからプリントに向き合った。



「ここはこの公式使うんだよ。求めたいのはここの長さだろ」

「な、なるほど」

「そこ違う、こっち先に求めて」

「はい!」



結局紘のおかげで、全問解けてしまった。

隣の席だからわかる、紘は全然真面目に授業なんて聞いてない。

だいたいいつも机の下でスマホゲームしているか、居眠りしてるか、私にちょっかいかけてるかの3択だ。


それなのに、どうして勉強できるんだろう。なんかむかつくなぁ。




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