不機嫌なキスしか知らない



「じゃーね、紗和」





また明日、と余裕たっぷりの笑みで私を見下ろす紘は、最後にちらりと圭太の方を見て帰っていった。



さっきから圭太を気にする紘のそれは、独占欲なのか。

きっとそんなことはないんだろうけれど、どうしたって、胸が高揚している私がいた。



街灯の少ない道を帰っていく紘の背中は、なんだか寂しそうで、守ってあげたいって、そんなこと思ってしまった。





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