不機嫌なキスしか知らない
「なあ……紗和、本当に大丈夫なの?」
土曜日の昼間。
今日は何も用事がなかったので、私は圭太の部屋に入り浸ってお菓子を食べながらコントローラーを握っている。
圭太も隣でテレビ画面に向かってコントローラーを操作する。
ゲームの電子音が鳴る部屋で、私のアバターと圭太のアバターが画面上で戦っている。
そんな状況で、画面から目を離さないまま圭太が呟いた。
「何が?大丈夫だよ。もうすぐ圭太のことも倒すし」
「いや、ゲームの話じゃなくて」
……わかってるよ、ゲームの話じゃないことなんて。
わかってるけど聞かれたくないから誤魔化してるんだから、察してほしい。
カチャカチャとボタンを押しながら、圭太のアバターを倒す。
うわ、負けた。圭太の口惜しそうな声と、コントローラーを床に置いた音。
渋々私もコントローラーを置いて、圭太のほうを見る。