不機嫌なキスしか知らない
「藍沢だよ。いつの間にあんなに仲良くなったわけ?」
この前、紘が家まで送ってくれた時。
肩を抱き寄せた紘のことを言っているんだろう。
心配してくれているところ申し訳ないけれど、実はキスまでしてしまっただなんて絶対に言えない。
「だから大丈夫だって」
「遊ばれてるんじゃねえの?」
……そうだよ、きっとその通りだよ。
わかってるよ、そんなこと。
紘の本命は麗奈先輩だもん。
私とキスするのは、何でかわからないけれど。
だけど私だって本命は圭太だ。
なんで紘とキスしてるのか、私だってわからない。
だけど紘と一緒にいるのが、嫌いじゃない自分もいる。
だけど本気になっちゃだめだって、私がいちばん分かってるよ。