不機嫌なキスしか知らない
「……圭太には関係ないでしょ」
そんなに傷付いた顔、しないでよ。
泣きたいのはこっちのほうだよ。
「あるよ……幼なじみじゃん」
「……ごめん、そんな顔しないで。
私だって圭太のことは大事だよ」
私が眉を下げて笑ったら、圭太もほっとしたように頬を緩める。
昔から何度、この台詞を聞いただろう。
何度、「幼なじみ」という関係に救われて、何度、絶望しただろう。
幼なじみだから隣にいられる。
幼なじみだから、圭太の彼女になれない。
圭太にとって私は家族みたいなもので、特別な女の子じゃない。
その現実を突きつけられるたびに、胸の奥が針で刺されたみたいにちくちく痛む。