不機嫌なキスしか知らない



「私だってちゃんと考えてるよ。
簡単に騙されたりしないし、別に紘のこと好きなわけじゃないよ」


「……それならいいけど、あんなにベタベタ触られていいわけ?」


「そういう、人なんだよ。
誰にだってそうなの」


「ふーん……」




まだ納得はしていないみたいだけれど、とりあえずこの話を終えてくれた。



そう、紘はあんなこと誰にだってするんだろう。


紘にとって特別なのは、麗奈先輩だけなんだから。


今はたまたま私がお気に入りなのかもしれないけれど、きっとすぐに飽きる。


だって正真正銘私は「遊び」なんだ。




「あ、そうだ。これ渡そうとしてたんだ」




またゲームを再開してしばらくして、圭太がコントローラーをもう一度床に置く。


私の奥にある棚から何かを取ろうとした圭太の体が、ぐっと私に近付く。



< 70 / 275 >

この作品をシェア

pagetop