不機嫌なキスしか知らない
「私だってちゃんと考えてるよ。
簡単に騙されたりしないし、別に紘のこと好きなわけじゃないよ」
「……それならいいけど、あんなにベタベタ触られていいわけ?」
「そういう、人なんだよ。
誰にだってそうなの」
「ふーん……」
まだ納得はしていないみたいだけれど、とりあえずこの話を終えてくれた。
そう、紘はあんなこと誰にだってするんだろう。
紘にとって特別なのは、麗奈先輩だけなんだから。
今はたまたま私がお気に入りなのかもしれないけれど、きっとすぐに飽きる。
だって正真正銘私は「遊び」なんだ。
「あ、そうだ。これ渡そうとしてたんだ」
またゲームを再開してしばらくして、圭太がコントローラーをもう一度床に置く。
私の奥にある棚から何かを取ろうとした圭太の体が、ぐっと私に近付く。