不機嫌なキスしか知らない



「なにー?メッセージも1人で送れないなんてヘタレだなぁ」

「うるせー」

「しょうがないから手伝ってあげるよ」




泣きそうになった顔を隠すように、笑顔を貼り付ける。


こんなにもはっきりと私の方を見てくれていないのに、長年染み付いた私の気持ちはなかなか消えてくれない。



──もう何度、同じことを繰り返すんだろう。



圭太がどこか行ってしまわないように願うだけで。

自分はなにも失いたくないから、何の行動もしないで。


幼なじみでもいいからと、圭太を繋ぎとめるのに必死だ。




「やっと連絡先交換したんだ?」

「そう」

「一緒に帰ったりしてたのに連絡先は知らなかったの?」

「……まあ、うん」



何だか順番がおかしいところも、圭太らしくて可愛いなんて思ってしまった。そんなこと思いたくないのに。



< 74 / 275 >

この作品をシェア

pagetop