不機嫌なキスしか知らない
「最初のメッセージって何で送ればいいの?」
「うーん……冷たすぎず、暑苦しすぎず、っていうか」
「難しいこと言うなよ」
ふたりで小さな画面を覗き込んで、文章を考える。
ひとつくらい絵文字があってもいいのかとか、スタンプはどれを使うのかとか、真剣に議論する。
私、どうして好きな人の恋にこんなに協力してるんだろうか。
「よし、送った!ありがとうな紗和!」
白い歯をのぞかせて、爽やかに笑う圭太。
その笑顔、私のものじゃないのに。
それなのにときめいてしまうのが悔しい。
早く、はやく圭太のこと、ただの幼なじみだと思えるようになりたい。
だってこんなの、苦しくて仕方ない。
いくら紘にドキドキしたって、圭太の隣にいるだけで思い知らされる。
……私は圭太が好きなんだって。