不機嫌なキスしか知らない
「はぁ……」
圭太の家から帰って、自分の部屋。
ベッドの上にごろりと転がって、ため息をつく。羨ましい。
圭太にあんなふうに想ってもらえる女の子のことが。
メッセージを送れただけであんなに喜んでもらえる、菫ちゃんのことが。
「私だって、圭太の好きな人になりたかった……」
じわり、と目の奥が熱くなる。
さっきまで我慢して、無理に笑っていた緊張の糸が切れたように涙がこぼれてくる。
……もっとはやく、好きだって言えばよかったのかもしれない。
圭太に好きな人ができる前に。