不機嫌なキスしか知らない
もっと前に、私が好きだって言っていたら。
優しい圭太のことだから、ちゃんと考えてくれただろう。
そしたら、もしかしたら、私たちの今は変わってたのかな。
そんなこと考えてもしかたなくて、圭太が菫ちゃんを好きなことはなにも変わらなくて。
もう今更、きみが好きだなんて言えなくなってしまった。
「っ、うう……」
溢れて止まらない涙は、シーツを湿らせる。
と、ベッドの上に置いたスマホが突然鳴った。
驚いて画面を見て、もう一度目を見張る。
『着信:藍沢紘』
そういえば、私たちも連絡先交換したんだっけ。だ
からって、急に電話?不審に思いながらも、応答ボタンをタップする。