不機嫌なキスしか知らない
「そうやって励ましてくれるの、紘の優しいところだね」
『……うるさ』
顔は見えないけど、きっと照れてるな。
きまり悪そうに目を逸らす紘を想像したら、なんだか心がぽかぽかした。
『明日も落ち込んでたら慰めてやるよ』
「……いいです、紘の慰め方はおかしいので」
よく考えたらキスで慰めるなんて、恋人同士にしか許されないことだよ。
『なに期待してんの?
俺はキスなんて言ってないけど』
「……むかつく」
『はは、じゃあまた明日な』
笑って電話を切ろうとする紘に、驚いて呼び止める。
「本当に用事あったわけじゃないの?」
何もないのに、急に私に電話かけてきたの?