不機嫌なキスしか知らない
いろんな言い訳を頭の中でぐるぐるめぐらせて、そのどれも言葉にはならなくて。
私はただされるがまま、紘の唇を受け入れる。
そういう気分じゃないって、言ってたくせに。どうしてこんなに甘いキスするの。
「ん、」
上擦った声が漏れて、恥ずかしくて顔が熱くなる。最低だ。
さっきまで、違う女の子にキスした唇で触れるなんて。
こんなのおかしい、普通じゃない。
わかってるのにその背徳感がより私の心臓の音を加速させる。
「ひ、ろ……」
一瞬離れた唇に、訴えるように名前を呼ぶ。
もう、くるしい。
ドキドキして、こんな自分が嫌で、さっきの麗奈先輩とのキスが頭から離れなくて、ぜんぶ、ぜんぶくるしい。