不機嫌なキスしか知らない


「っ、はぁ」




やっと解放されて、思いっきり酸素を吸い込む私を、紘は可笑しそうに見ている。

抱かれたままの腰から紘の腕の熱が伝わってきて、もうずっと、体があつい。


そのまましばらく紘は私の目を見つめるから、私はそこから逸らせなくて。

吸い込まれるようなダークブラウンの瞳に、魔法にかけられて動けない。






「……え、」





驚いた声がして、パッと顔を上げる。

まずい、そういえばここは学校で、いくら放課後で人気がないとは言っても階段の前。

いつ人が来たっておかしくない。


恐る恐る、振り返ると。



「圭太!?」




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