不機嫌なキスしか知らない


私を見て驚いていた圭太の表情は、すぐに怒りに変わる。




「紗和になにしてんだよ!」




圭太の視線の先は、私を抱きしめる紘の腕。

慌ててその腕を振り払おうとするけれど、ぐっと力を入れられたせいで逃れられない。




「ああごめん、見られちゃったね」




ごめんなんて少しも思ってなさそうな悪びれた様子もない顔で、私に笑いかける紘。


「そう思ってるなら離して」


と言い返せば、


「んー」

と曖昧な返事をする。腕には力を込めたまま。



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