不機嫌なキスしか知らない
「紗和で遊ぶな」
初めて見るくらい怒った圭太の表情に、思わずドキッとしてしまった。
私のために、そんなに本気で怒ってくれるんだ。たとえそれが、恋愛感情じゃなくたって、嬉しい。
「──なんで?お前に関係なくない?」
相変わらず悪びれた様子もない紘は、挑発するように圭太の目を見たまま、私の髪をするりと梳く。
私の髪型紘の指の間を通って、さらりと肩に落ちる。
「はぁ?」
圭太は怒った顔で紘の腕を掴んで、私を解放した。
私を背中に隠すようにして、紘を睨みつけている。
その男らしい姿に、不謹慎にも胸がキュンとしてしまったのは許して欲しい。