不機嫌なキスしか知らない
……大丈夫、好きになるわけない。
利用してやってるのはこっちだ。
圭太への気持ちを、この苦しさを忘れるために、紘を利用してるだけだ。
紘だってきっと、同じだろう。
ぐるぐるまわって、ゆらゆら揺れて。
利用してるのは、されてるのは、どちらだろうか。
「じゃあ紗和、帰るぞ」
圭太が床に落ちていた私のバッグを拾い上げてそう言う。
「え、」
「もうそいつに用ないだろ。帰ろう」
私は驚いて、ちらりと紘の表情を窺う。