世界はきみに恋をしている。
それは、きみの個性
◇
それは、秋のある晴れた日のこと。
私達は、胸を躍らせ、心を弾ませ、コンビニで買ってきたお菓子を机の上に広げていた。学校の北校舎、一番奥にある美術室で。
「準備完了! あー、早く来ないかな。野上さん」
部員数たったの2人というこの廃部寸前の美術部に、新入部員がやってくるという願ってもないビックニュースが飛び込んできたのは、今朝のこと。
この美術部の顧問である46歳おじさん教師、通称タケちゃんが、「今日は新入部員を連れてくるぞ」なんて言いだしたのだ。
「ね、どんな子だと思う?仲良くなれるかなあ……」
私の問いかけに、もう一人の部員であるカナは、「どうかな」なんて苦笑いを浮かべている。今まで何回も見学に来た子がいたけど、実際にちゃんと続けているのは、私達二人だけなのだ。
今日やってくる新入部員は、タケちゃんいわく、"野上"という苗字で、とっても明るい子らしい。
今日がその野上さんが初めて部活に来る日で、私達はせっせと歓迎会の準備をしていたってわけだ。
私、野山 美羽(ノヤマ ミウ) は、この廃部寸前の美術部員で、他にはなにも語ることのないごくごく普通の女子高生。
そして、さっきから一緒に準備をしていたのは、私と同じ2年生の春日 佳奈(ハルヒ カナ)。黒髪ショートが良く似合って、まるでお人形さんみたいな顔立ちをしているんだ。
カナとは美術部で仲良くなって、クラスまで一緒の仲。
美術部は、今現在この私達二人と、顧問のタケちゃんだけで成り立っているんだ。