世界はきみに恋をしている。
お菓子をつまみ食いするのにも飽きた私は、一回ぐっと腕を伸ばしてから椅子から立ち上がる。
カナも帰ってこないし、タケちゃんがやってくる気配もない。
この広い美術室でひとりは寂しいなあと思いながら、部屋の真ん中に立ってみた。
静かな校舎内。
窓の外する野球部の声に耳をすまして目を閉じた。遠くの方から吹奏楽部の音も聞こえてくる。
そんな音たちに耳を傾けて。
静かな空間に、異質に混ざった何かの音に気づいて目をパッと開いた。
____バタバタッ
誰かが走っているような音。
ほんのかすかな音だったけど、それはどんどん大きくなってくる。こっちへ近づいてきている証拠だ。
誰かが全力疾走でこっちまで走ってきているんだ。
もしかしたらタケちゃん?それともカナ?
私はゆっくりと、扉の近くまで足を進めた。耳を澄まさなくても聞こえるようになった音はもう、すぐそこまできている。
こんなに急いで、どうしたんだろう、と。扉に手をかけたその瞬間、物凄い勢いで、扉が開いた。
そして目の前に、
それは、とても目を惹かれるような____
_______男の人が、立っていたんだ。