わすれられない初恋の話

駅前の広場に着いて、近くの自動販売機でホットココアを買った。

まだチラホラとした電飾があるだけで、本格的なライトアップまでは時間がある。
今はまだ静かなこの広場の真ん中の大きな木が、煌びやかに変身するまであと約2時間。

きょろきょろと辺りを見回してみる。
目的の人の姿は見当たらない。
今の時間は、仕事帰りの人ばかりだ。カップルや待ち合わせしてる人が増えるのは、もう少し後なのだろう。

横に広くアーチを描いている階段に腰を下ろして、缶のプルタブを起こす。
人を見渡せるように、高い位置を選んだ。


ドクドクとうるさくなってきた心臓を落ち着けたくて、甘いココアを流し込んだ。
今からこんな調子じゃ、実際会えた時には一体どうなってしまうんだろう。
なんて、会える確率は限りなくゼロに近いのだ。

10年だ。
こんなに長い月日が経ってしまった。
この10年間で、きっとお互い変わったところがたくさんある。
良くも悪くも、きっとたくさん。

顔つきも、髪の長さも、服の趣味も、声のトーンも、好きな食べ物も、笑い方も、怒り方も、涙の温度も。

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