わすれられない初恋の話

駅方面へ歩いていると、何組ものカップルとすれ違った。
今日という日は、いつもより手の込んだ電飾に照らされている恋がいくつもある。

大人の恋、子供の恋。
俺が今胸に抱えているこれは、果たしてどっちなのか。
子供の頃の恋を抱えたまま大人になってしまった。

だけど子供の恋といえども、俺にとってはあれ以上ない大恋愛だった。
大人になった今のほうがずっと、本格的な恋が出来るはずなのに。
あの恋愛を越えるものには、とうとう出会えなかった。

「っと……」

ぼんやりしながら歩いていると、前から歩いてきた人を避けきれずに肩がぶつかってしまった。

「あ、ごめんなさい!」

「いえ、こちらこそ」

焦ったように謝ってきたのは中学生か高校生の男の子で、その隣には大人しそうな女の子が立っている。

こんな日くらい、狭い道でも横に並んで歩きたいよな。
軽くペコっと頭を下げた男の子達は、また自分達の世界へと戻っていく。

仲良く手を繋ぐ後ろ姿を見て、懐かしい気持ちになった。
俺達もきっと、あんな風だったんだろう。

自分が高校生だった頃を思い出してみる。
告白したのは、俺のほうだった。

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