わすれられない初恋の話
真っ直ぐ並んで建つビルの1つに、大きなポスターが貼ってあるのが目に入った。
誰もが知る超有名スポーツ選手が、サングラスをかけてポーズを決めているものだった。
全体はモノクロなのに、サングラスのレンズだけが青く色付いているという、洒落たデザインのポスターだ。
スポーツ選手や、テレビのスポーツ中継なんかを見ると、必ずサッカーのことを思い出す。
毎日遅くまで部活をしていたこと、泥だらけになった靴下、憧れの選手の真似をして買ったリストバンド。
それと、フェンス越しに応援してくれる姿。
菜々はよく、俺の部活が終わるのをそうして待っていてくれた。
見られていると思うと緊張するのに、何故かいつもより力が湧いてくるからとても不思議だったのを覚えている。
「おい黒田、彼女見てんじゃん」
「え、ああ」
「相変わらずラブラブだなお前ら〜!」
そんな風にサッカー部の奴らに冷やかされるのを鬱陶しいと言うように、眉間にしわを寄せてうるさいと言い返す。
だけど心の中では、優越感を感じていたのだ。
菜々が自分だけを見てくれている。みんなが羨ましがっている。こんなに充実した高校生活は他にないだろうと、胸を張って言えた。
可愛くて可憐で、嫌味がない。
そんな菜々が自分の彼女なのだということが、とても誇らしかった。