わすれられない初恋の話
———どうして教えてくれなかったの?
そう泣きながら言われたのは、遠い大学に行くと告げた時だった。
将来の夢を自分なりに考えていた俺は、地元から離れた語学に力を入れた大学を受験することにした。
誰かの影響とかではなく、自分で決めたことだった。
当時は、正直なところ、希望の大学に行くチャンスは今しかないけれど、菜々とは離れていても付き合っていけると考えていた。
遠距離恋愛になっても別れる気なんてさらさら無かったし、相手もそうだと思い込んでいたのだ。
最初は、隠すつもりは無かった。
どこの大学を受けるのか、菜々に聞かれたら答えようと思っていた。
でも菜々は聞かなかった。
興味がないのかとも思ったが、まさか離れた大学に行くなんて想像もしてないんだろうと気付いた時にはかなり時が経っていた。
そうして、受験の日が近付けば近付くほど、自分からは言い出しにくくなっていってしまった。
”離れても付き合っていける”
そんな自分の考えが間違っていたことに、菜々の涙を見て初めて気が付いた。
どうせどちらか1つしか選べないなら、菜々を選べば良かった。
本気で、そう思った。