わすれられない初恋の話
大学4回生になって、さて就職先をどうしようと思った時、地元に残っている高校の同級生に連絡を取って、菜々はどうしてるのかを聞きまくった。
希望の職種に就けるなら、菜々のいる街で就職したい。
これは、高校を卒業して離れ離れになった時点ですでに考えていたことだ。
菜々が短大を卒業して、そのまま地元で働いていることを知った俺は、そこから怒涛の就活で見事内定を勝ち取った。
これであの約束を果たせたら、今度こそずっと一緒にいよう。
それならその日までに、再会しても恥ずかしくない自分になっておきたい。
好きな女1人、幸せに出来るだけの力を溜めておきたい。
堂々と、会いに行けるように。
「はあ………」
口から吐き出した息は白く色付いて、空へと立ち昇っていく。
今の自分は、会いに行っても恥ずかしくないような大人になれているだろうか?
もう一度好きになってもらえるだけの何かが、備わっているだろうか?
「……はは」
こんな情けないことを考えてるようでは、振り向いてもらえなくても仕方ないんじゃないか。
だけどこの10年間、いくら必死に働いたって、どれだけ頭の中で菜々を想ったって、自信なんてものはこれっぽっちも養うことが出来なかったのだ。